心雑音が認められたため、心臓の超音波検のため来院した17歳の雌ネコちゃんです。
一月前より間欠的な嘔吐があり顔にイボのようなものが出来ているとの事でした。身体検査で左写真の様な皮膚腫瘤が顔や体幹に多発していることが確認されました。
皮膚腫瘤の針吸引生検を行ったところ多数の肥満細胞が採取されたため、心臓の検査に加え、血液検査、レントゲン検査、腹部超音波検査を計画しました。
血液塗抹上に皮膚腫瘤の針吸引生検で採取されたものと同じ肥満細胞が観察されました。
また、腹部レントゲン検査において腫大した脾臓陰影(⬅)が確認されました。
腹部超音波検査では腫大した脾臓が確認されたため、脾臓の針吸引生検も実施したところ多数の肥満細胞が採取されました。
以上の検査結果から内蔵型肥満細胞腫と診断しました。17歳と高齢であり心疾患や若干の腎機能の低下が認められるとこから麻酔、手術のリスクをお話しましたが手術を乗り切れれれば比較的長期の生存が見込めるとこからご家族は手術を希望されました。
麻酔のための気管挿管する際、舌の下にも白い腫瘤病変(⬅)が確認されました。また剃毛してみると腹部皮膚全体にも瀰漫性の白班が認められました。
脾臓摘出は血管を結紮離断する事なく止血可能なシーリングという機器を用いることにより手術時間の大幅な短縮ができました。
心配していた腎不全等、手術による合併症もなく順調に回復しました。
内蔵型肥満細胞腫の猫は、倦怠、食欲不振、体重減少や慢性の嘔吐など非特異的な症状を呈します。嘔吐は肥満細胞から放出されるヒスタミンやセロトニンなどの生体アミンにより胃壁細胞の過形成や胃酸産生の増加が引き起こされ、その結果生じる胃十二指腸潰瘍によると考えれています。また、腹部膨満や、稀にこの症例の様な多発性の皮膚転移が認められることがあります。
内蔵型肥満細胞に対する緩和的な内科療法は明らかな臨床症状の改善をもたらさないようで、抹消血中に肥満細胞が出現していたり多発性の皮膚転移が起こってる様な症例でも脾臓摘出が推奨されます。
脾臓摘出をおこなった21例の報告では、生存期間2〜34ヶ月(中央値は約12ヶ月)でした。
現在の所、猫の内蔵型肥満細胞腫に対する化学療法の有用性は報告されていない様です。
調布市 つつじヶ丘動物病院
ありません。