14歳の雄ネコちゃんが嘔吐を主訴に来院しました。嘔吐の頻度は1週1回程度で食欲は落ちていないとの事でした。
高齢でもあるので一通りの検査を希望されました。血液検査では腎パネルの軽度の異常を認めましたが嘔吐の原因とは考え難いレベルでした。
腹部レントゲン検査では腹部中央に消化管内
ガスが認められた以外、異常はみとめられま
せんでした。
腹部超音波検査では2×3の小腸と思われる腫
瘤性病変が認められました。
腸管の壁が肥厚し内腔は狭窄しているものと
推察されました。
超音波ガイド下で針吸引生検を行いなしたが
診断に有効な細胞は採取出来ませんでした。
14歳と高齢であった事から飼主様は手術を躊躇われ内科的治療を希望されました。
相談の結果、これまでの検査で確証は得られていませんが、猫ちゃんの消化管に発生する腫瘍で頻度の高いリンパ腫であれば内科的治療に反応する可能性が期待できるので試験的治療を試み、反応がなければ外科的治療に変更するという事でご同意頂きました。
治療は比較的副作用の出にくいプレドニゾロンとL−アスパラギナーゼを投与し1週間後に治療効果判定することとしました。
1週間後の超音波検査では腫瘤が増大傾向を示していたため、リンパ腫以外の腫瘍の可能性が高いと判断されたため開腹による腫瘤の切除及び腸管吻合術を計画しました。
腫瘍は回盲部に近い回腸に発生していたため、盲腸を含む回盲部を腫瘍と共に切除し回腸-結腸の端々吻合を実施し、縫合部のリークが無い事を確認後、大網を被せ定法により閉腹しました。
24時間絶食水の後、水分から徐々に採食を開始し、術後4日で退院としました。小腸と大腸を直接吻合したため術後は下痢〜軟便になると予想されましたがが、術後約2週間で正常便となりました。
病理組織検査の結果、腸管腺癌と診断され、切断面に腫瘍細胞は認めらられません(マージンクリーン)でした。
猫の腸管に発せにする腫瘍はリンパ腫が最も多く、他の腫瘍としては腺癌、平滑筋肉腫、肥満細胞腫などの報告があります。
猫の腸管の腺癌は高齢猫の回腸と回盲部に多く発生し、通常輪状の腫瘍増殖形態をとるため腸閉塞の原因となります。
たま、浸潤性に増殖することが一般的で、転移は所属リンパ節、肝臓や肺に多く見られ、時として播種性に腹腔漿膜転移を起しリンパ管閉塞そして腹水貯留を招くこともあり慎重な経過観察が必要です。
腺癌に対する化学療法の効果は殆ど報告がなく、非ステロイド性抗炎症剤のピロキシカムが直腸の悪性病変に対し有効であるという報告があります。
ありません。