症例紹介

Case67 低容量デキサメサゾン抑制試験で診断した犬の下垂体性副腎皮質機能亢進症の1齢

半年前より徐々にお腹が張ってきて、数ヶ月前より手足の皮膚病が悪化したとのことで来院した体重4.9kgの13歳のミニチュアダックス君です。

食欲にムラがあり、おしっこの量が以前より多めで脚力の低下気味でふらつくことがあるとのことでした。
身体検査では軽度の腹部膨満と腹部の脱毛と菲薄化、耳と四肢の皮膚の苔癬化と色素沈着が認めらました。

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皮膚の搔爬検査では多数の毛包虫が認められました。

20140927PDH3毛包虫(D.canis)01

かかりつけの病院での血液検査ではGPT355U/L(正常値:17~78)、ALP2556U/L(正常値:47~333)の顕著な増加が認められていました。

臨床症状および血液検査の結果から副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)の疑いがあるとのことで2度にわたりACTH刺激試験(クッシング症候群のスクリーニング検査)を行ったそうですが、クッシング症候群とは確定できないとの結果でした。

当院での尿検査で尿比重が10.12と低く、血液検査結果およびこれまでの経過から副腎皮質機能亢進症の可能性が高いと考え、腹部超音波検査で副腎の大きさの確認ともう一つの確定診断のスタンダードである低容量デキサメメサゾン抑制試験(LDD)を計画しました。

超音波検査では左右の副腎幅は7mm以上で腫大していることが確認できました。また、右副腎は一部石灰化したいました。

左副腎右副腎

 

image001のコピー

左のグラフは本症例のLDDの結果です。

Preの値は7.4μg/dLとわずかに高値(参考基準値:1.7〜7.2)を示したのに対し4時間値は5.2μg/dLとわずかに抑制され、8時間値は7.6μg/dLと再び上昇しました。(正常な犬では8時間値が1.4μg/dL以下)

 

img172-2当院では副腎皮質機能亢進症の診断の際、初めにACTH刺激試験を行うことが多いですが、この検査の下垂体性副腎皮質機能亢進症(PDH)に対する感度は80〜85%程度であり、ACTH刺激試験でクッシング症候群と診断できない場合にLDDを行うと良いとされています。

PDHでは左図の様に4時間後には抑制されるものの8時間値は抑制されず再び上昇します。

また副腎腫瘍(AT)では4時間値、8時間値とも抑制されません。

 

超音波検査所見およびLDDの検査結果より下垂体性副腎皮質機能亢進症 (PDH)と診断しトリロスタンによる治療を開始したところ皮膚症状は徐々に改善し、1日の500ml程度だった飲水量も半減しました。

下の写真は治療開始10か月後のものです。毛包虫も検出できなくなり綺麗に毛が生え揃いました。

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調布市 つつじヶ丘動物病院

ありません。