症例紹介

Case51 内蔵型肥満細胞腫の猫の1例

皮膚に多発性腫瘤があり、数日に1回くらいの頻度で嘔吐があり対症療法で治まらないため精査目的で来院した14歳の雌の猫ちゃんです。

MCT1s
皮膚の腫瘤病変

 

顔面をはじめ体幹皮膚に米粒〜小豆大の腫瘤が多発していました。

腫瘤の針吸引生検による細胞診で多数の肥満細胞が採取され、慢性の嘔吐もあることから内蔵型肥満細胞腫を強く疑い血液検査、レントゲン検査、超音波検査を計画しました。

 

 

MCT梢血s
抹消血中の肥満細胞
MCT3s
レントゲン検査所見

 

 

 

 

 

 

 

 

血液検査では抹消血中に肥満細胞の出現が確認され、腹部のレントゲン検査では脾臓陰影(←)の拡大が確認されました。

MCT4s
針吸引生検時の脾臓の超音波検査所見
MCT脾FNAs
脾臓の細胞診所見〜多数の肥満細胞が認められる

超音波ガイド下で脾臓の針吸引検査を行ったところ多数の肥満細胞が採取され、内蔵型肥満細胞腫と診断しました。

その他の以上所見として胃に接した腫瘤病変の存在(発生母地不明)が判明しました。

内蔵型肥満細胞腫の治療は脾臓摘出が有効な事がわかっているので脾摘と同時に腫瘤病変の探索および可能であれば摘出を計画しました。

MCT2s
舌の病変

 

麻酔導入の際、舌にも粟粒性の病変()が多発している事が確認されました。

 

 

 

 

 

MCT脾臓s
摘出した脾臓
MCT肝臓s
肝臓の腫瘤病変

脾臓は血管シーリングシステムを用いて摘出しました。胃に接した腫瘤は肝臓の外側左葉から発生したものだったので、腫瘤を含めた肝葉切除をを行いました。

病理組織検査の結果、脾臓は脾臓肥満細胞腫、肝臓は結節性肝細胞過形成および肥満細胞の転移と診断されました。

内蔵型肥満細胞腫は老齢の雑種猫に最もよく見られ、通常は脾臓に発生し、同時に肝臓、リンパ節、骨髄が侵されることがあります。

症状は非特異的症状あるいはヒスタミン放出とその結果生じる胃十二指腸潰瘍による慢性の嘔吐です。また、本症例の様に皮膚に粟粒性結節性病変が多発する事もあります。

治療の第一選択は脾臓摘出です。全身症状を伴っている場合でも脾臓を摘出する事により症状が改善する事が知られており、摘出後の生存期間は2〜34ヶ月(中央値は約12ヶ月)というデータがあります。

 

この症例の猫ちゃんも術後の経過は良好で嘔吐も止まりました。

 

 

 

 

 

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

 

ありません。