食欲不振および1週間続く嘔吐と下痢を主訴に来院した11歳のミニチュアダックス君です。
胃腸炎と仮診断し一週間程対症療法を行いましたが完治せず、第8病日に触診で後腹部に母指頭大のしこりを触知したので精査を行いました。
腹部レントゲン検査では各臓器の漿膜面の鮮鋭度の低下が認められましたが明らかな腫瘤病変は確認出来ませんでした。
腹部超音波検査では腸管に隣接した最大径で1.8cmの低エコーの腫瘤を認めましたが発生母地は不明でしたた。
また脾臓に1.5cmの腫瘤病変が有ることも確認されました。
超音波ガイド下で腫瘤の針吸引生検を行ったところ紡錘形の細胞が採取されましたが確定診断には至らず、脾臓にも腫瘤がある事から飼い主様と相談の結果、脾臓摘出と腫瘤の生検、可能であれば摘出という計画で試験開腹を行うことになりました。
開腹すると腹水の貯留(↑)が認められ、腫瘤は結腸の一部が肥厚したもの(←)である事が判明しました。病変部分の漿膜側は引き攣った様に変化しており腸管壁は内腔に向かって肥厚し狭窄してました。
さらに腹腔内探査を続けて行くと腸管の漿膜面(↑)や腸間膜は腫瘍の腹腔内播種を疑う多数の粟粒性病変が認められたため、腫瘤の摘出は適応外と判断し病変の生検を行いました。
術前の超音波検査所見のとおり、脾臓の腫瘤病変(←)が確認されたため血管シーリングシステムを用い脾臓摘出を行いました。
術後は通常の治療に加えピロキシカムの投与を行っていましたが病理組織検査の結果、腸管および腸間膜の病変は反応性肉芽組織と診断されたためステロイドの投与を行ったところ嘔吐、下痢の症状も改善し順調に経過しています。
また脾臓の腫瘤病変も結節性過形成と診断され、摘出により破裂の心配もなくなりました。
今回の試験開腹では肉眼所見から腸管の悪性腫瘍が強く疑われましたが結果は「典型的な肉不が組織の像」で悪性腫瘍は否定されましたが病因は不明でした。
調布市 つつじヶ丘動物病院
ありません。