症例紹介

Case37 内視鏡で胃腺癌と診断した犬の1例(2)

2週間前からの食欲の低下と2日前と今日、嘔吐したとの主訴で来院した10歳のボーダーコリーちゃんです。

血液検査では炎症の度合いを調べるCRPの値が2.3mg/dlと軽度に上昇していた以外は特筆する異常はありませんでした。

エコー2s
腹部超音波検査所見

 

腹部の超音波検査では胃壁の肥厚が認められ、厚い所では12mm程度あり正常の2倍程の厚さがありました。

食欲不振、嘔吐及び超音波検査所見から胃の腫瘍が疑われるので、胃炎の対症療法で良くならない場合は内視鏡による胃の生検が必要である旨ご家族にお話ししました。

内視鏡s内視鏡s

内視鏡2s
内視鏡所見

 

自宅での治療で3日間経過観察しましたが症状が好転しませんでした。

ご家族の了解が得られたので内視鏡検査を行いました。画面左上が白く隆起しているのがわかります。その部分は正常な胃の粘膜に比べ硬く生検鉗子が食い込みにくかったのでいつもより多くの場所の生検を行いました。

組織s
病理組織所見

 

病理組織検査の結果、浸潤性に増殖する上皮性細胞が認められ、胃腺癌と診断されました。

エコー検査で肝臓に転移を疑う病変もみつかり進行した胃癌であるため対症療法を希望されました。

幸い現在は治療が奏功し嘔吐が無くなり食欲増進剤で食事も採れる様になったとの事です。

 

胃の腫瘍の中で最も多いのが腺癌で罹患犬の殆どは高齢で、年齢の中央値は10歳です。
腺癌の多くは胃の下部2/3、特に幽門部に発生するので早期に発見できればビルロートⅠないしビルロートⅡという手術が適応になります。

しかし、人は健康診断時の内視鏡検査で粘膜に発生したごく初期に発見されるのに比べ、ワンちゃんの場合、時には潰瘍を形成した胃に広く浸潤した状態で発見される事が多いので外科療法が適応になることが少ないのが現状です。

これまで胃癌ワンちゃんに遭遇するのは数年に1頭のペースでしたが、直近1年でこのワンちゃんが2頭目となります。

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

ありません。