症例紹介

Case36 膵炎を併発した胆嚢粘液嚢腫の犬の1例

食欲廃絶と嘔吐を主訴に来院した体重7.5kgの10歳の柴犬ちゃんです。
身体検査では腹部の緊張と圧痛がありました。

血液検査では白血球数や炎症の指標であるCRPの上昇が認められた他、肝酵素全て(ALT,AST,ALP,GGT)とビリルビンの上昇が認められました。

胆嚢2s
胆嚢超音波所見

 

超音波検査では胆嚢は46×36.8mmと体の大きさと比較して大きく、内部は不整な高エコー(白っぽい)となっており胆嚢粘液嚢腫と診断しました。

周囲にはわずかに液体(白矢印)も認められます。

※典型的な胆嚢粘液嚢腫の超音波検査所見はキューイフルーツ様と表現される事があります。

 

 

腹水
十二指腸周囲 超音波所見

 

十二指腸周囲には腹水も認められ膵臓は白くまた腫れている様にみえます。

また、犬膵特異的リパーゼの値は298μg/L(正常値:≦200)と高値を示し膵炎も併発しています。

穿刺吸引した腹水は褐色がかったワイン色で血液よりビリルビン濃度が高く、胆汁が漏れて胆汁性腹膜炎を起こしている可能性が考えられました。
幸い本症例では点滴や膵炎および肝障害にたいする内科的治療を行ったところ容態は安定し食欲も出て来ました。

しかし胆汁性腹膜炎を起こしているという事は胆嚢破裂している事を意味し、現在は一時的に塞がっていてもまたいつ胆嚢が破れるかわからないので飼い主様と相談の結果、胆嚢提出をする事になりました。

胆嚢はパンパンに張った状態で、周囲には漏出した胆汁が付着していました。
写真右下は摘出した胆嚢です。術後の経過は極めて順調でした。

手術所見s
手術所見 胆嚢を肝臓がら剥離しているところ
手術所見2
摘出した胆嚢

胆嚢粘液嚢腫は中高年の犬にみられる疾患で、脂質代謝異常との関連が示唆されていますが原因は不明です。

超音波検査の普及により健康診断などで偶然みつかるワンちゃんもいます。
臨床症状を示さないワンちゃんもいますが、本症例の様に胆嚢破裂を引き起こすと胆汁性腹膜炎を起こし、食欲不振、嘔吐、黄疸、衰弱などの症状を呈し、治療が遅れれば命の危険性もあります。

無症状の場合、治療は症状低脂肪食と利胆剤による内科療法と外科療法があり、周術期の死亡率が高いと言われていますが外科的に胆嚢摘出した方が良いという意見が多いようです。

胆嚢破裂した症例では適期に手術巣必要があります。

 

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

 

ありません。