症例紹介

Case33 肛門嚢アポクリン腺癌の犬の1例

トリミングの際、トリマーさんに肛門の横にしこりがあり肛門腺絞りが出来ないと言われたとのことで来院した10歳の去勢済みのワンちゃんです。

身体検査で肛門の左9時〜6時方向に約3センチの不整形のしこりを触知しました。
2ヶ月前の健康診断では異常が認められなかったので腫瘍であればかなり進行が早いと考えられます。

FNA s
顕微鏡写真

 

腫瘍と非腫瘍の鑑別、腫瘍であればその種類を調べるため針吸引生検を行ったところ、多数の上皮系細胞が採取されました。

腫瘍の発生部位および細胞の形態から肛門嚢アポクリン腺癌が強く疑われます。

血液検査では大きな異常は認められず、また胸腹部レントゲン、エコー検査で転移を疑う所見はなかったため摘出手術を行いました。

 

手術所見s
手術所見

 

発生していた場所はやはり肛門嚢で、周囲の組織から慎重に剥離しましたが肛門括約筋の一部は切除する必要がありました。

写真左は摘出時の写真です。

 

 

 

腫瘍1s
腫瘍肉眼所見
腫瘍2
腫瘍割面

術後の経過は順調で心配した便失禁もありませんでした。
摘出した腫瘤の病理組織検査の結果は肛門嚢アポクリン腺癌solid typedeでした。

肛門嚢アポクリン腺癌はかつては中高年の雌犬に多いとされていましたが最近の研究ではその発生率に性差はない事がわかってきました。

この腫瘍は悪精度が高く、早期に腰下リンパ節や腸骨下リンパ節に転移すると言われています。また、合併症として高カルシュウム血症が有名です。

治療の第一選択は外科手術で、白金製剤やドキソルビシン、ミトキサントロンといった抗がん剤を併用する場合もあります。

 

 

 

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

 

ありません。