症例紹介

Case22 ステロイド反応性多発性関節炎

4歳のシーズー、女の子が左前肢の跛行のため来院しました。

2週間前にも跛行と震えの症状で夜間診療病院を受診した病歴があります。
この時行ったレントゲン検査では異常を認めず、鎮痛剤の投与で症状は改善していたとの事でした。

前院での治療が奏功していたで当院でも同様の治療を行いましたが、跛行の若干の改善は認められたものの、3日後の再診時には40°Cの発熱と食欲不振の全身症状が認められました。

血液検査を行った所、炎症の程度を調べるCRPの値が>7mg/dlと高値(正常値<0.7)を示し、また尿路感染も認められたので膀胱炎および腎盂腎炎を疑い抗生剤の投与を行いました。

多発性関節炎1-1
後肢のレントゲン写真
多発性関節炎1-2
膝関節のレントゲン写真

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

抗生剤を投与により尿路感染がコントロールできたにもかかわらず、40°C前後の発熱が治まらず跛行も続いたため、多発性関節炎を疑い関節液の検査を行いました。

レントゲン検査では特筆する所見はなく、関節液の検査では写真の様に粘稠性のない濁った関節液が採取され、有核細胞数10万以上(正常値:200〜3000/μl)と著増していました。細菌は認められませんでした。

多発性関節炎1-3
膝関節の関節液の採取
多発性関節炎1-4
採取した関節液

 

 

 

 

 

 

 

多発性関節炎1-5
関節液の細胞診所見

その他の検査として抗核抗体は陰性、参考として行ったリウマチ因子は陽性でした。

以上のより所見より,反応性多発性関節炎を疑いステロイドの投与を開始したところ、跛行は改善し、元気食欲も回復し良好に経過しています。

犬、猫の関節疾患は①非炎症性②感染性の炎症性関節疾患③非糜爛性非感染性多発性関節疾患④糜爛性非感染性多発性関節疾患に大別されます。

反応性多発性関節炎は③非糜爛性非感染性多発性関節疾の中の1つで、細菌、真菌、などの慢性感染、腫瘍、ある種の薬剤投与に関連して見られる事が多い病気です。

今回はの尿路感染が引き金となり、関節炎を起こしたものと考えられました。

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

 

ありません。