症例紹介

Case 56 特発性多発性関節炎の犬の1例

数ヶ月前よりどこか痛そうでヒーヒーと鳴く事があり跛行とふらつきもある。
2〜3日前から殆ど歩かなくなったとの事で来院された8歳の雌の柴犬ちゃんです。

近医をを受診し、椎間板ヘルニアと診断され治療を続けて来たが改善が見られず、3週間前からは甲状腺機能低下症の疑いも指摘され、ホルモン療法を開始したとのことです。

2日前より左後肢をかばう様になったとの事ですが、それ以前は前肢が痛そうだったそうです。

初診時のワンちゃんの状態は沈鬱で診察室で自由させても殆ど歩かない状態でした。
身体検査では左膝関節の僅かな腫大が認められましたが屈伸で痛がる事はありませんでした。

血液検査では白血球数の増加とCRPの著増が、レントゲン検査では左の膝関節内方脱臼(Fig.1白→)が認められました。

多発性関節炎1
Fig.1レントゲン所見DV像
多発性関炎2
Fig2.レントゲン所見 左膝関節La

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛みの部位が移動しているという事や血液検査結果の異常がら多発性関節炎を疑い関節液の検査を実施しました。

多発性関節炎3
Fig.3 左膝関節腔穿刺
多発性関節炎4
Fig.4 採取した関節液

毛を分けて念入りに消毒し細い針で関節液をしました。
正常な関節液は無色透明で粘稠性があり、有核細胞数の正常値は200〜3,000/μlです。

採取された関節液は灰白桃色で混濁しており、有核細胞数は82,800/μlと著しい増価が認められました。

多発性関節炎5
Fig.5 関節液の細胞診

 

関節液の細胞診(Fig.5)では好中球主体でその他少数のマクロファージと赤血球が認められ、鏡検レベルでは細菌は認められませんでした。

免疫抑制量のステロイドと抗生剤の投与を開始した所、翌日には改善傾向が認められ第3病日の再診時にはほぼ元通りに回復しました。

 

 

免疫介在性関節炎は非糜爛性関節炎と糜爛性関節炎に分類されます。
最も一般的は非糜爛性関節炎は特発性多発性関節炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、慢性の多発性関節炎、薬剤会財政多発性関節炎などで、滑液膜に免疫複合体が沈着することによって滑膜炎が起こると考えられています。

本症例では関節炎以外の症状は無く、発症前に薬の投与も無かった事から特発性多発性関節炎と診断しました。

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

ありません。