症例紹介

Case78 舌から空腸まで繋がった紐状異物により腸管穿孔を併発した1犬の例

3日前に絨毯の糸をむしっているところを家人が目撃し取ろうとしたが離さなかったので口から出ている部分のみハサミで切除した。その後食べたと思われる布と糸は吐いたが元気、食欲なく嘔吐が続いている、とのことで紹介いただいた12歳のミニピン君です。
身体検査では中等度の脱水が、血液検査ではCRPが7mg/dlと高値を示していました。

腹部レントゲンDV像

腹部レントゲンLat像

腹部レントゲン検査では腹腔諸臓器の漿膜ラインが不鮮明で軽度の腹水貯留が疑われましたが明らかな閉塞所見は認められませんでした。
飼い主様のお話と臨床経過から紐状異物が疑われたため腹部超音波検査を実施しました。

写真左は胃の超音波検査所見ですが、胃は液体で満たされ、中央に白い紐状の構造物が確認されました。

さらに紐状物は幽門から十二指腸に繋がっているのが確認確認されましたので飼い主様に説明しご同意頂いたので緊急手術となりました。

超音波検査所見:胃

超音波検査所見:幽

下に食い込んだ紐状物

手術時所見:穿孔部

手術時所見:空腸

 

摘出した異物

近位側は胃内へ誘導し内視鏡で摘出しました。舌に絡んでいた紐状物との連続性も確認しました。
胃内に残っていた異物を全て取り除き腹膜炎に対する処置としてドレーンを2本留置し閉腹しました。

ワンちゃん、ネコちゃんの中には紐で遊ぶのが好きな子がいて遊んでいる内に飲み込んでしまうことがあります。
紐状異物は時間経過とともに本症例の様に腸管がアコーデオン状に引きつれ、腸の内側が擦り切れてしまう事がありとても危険です。

口にくわえている状態で見つけたら無理に取ろうとせずフードやおやつなどで気を引いて離すようにすると良いでしょう。

万が一飲み込んでしまった場合はなるべく早く動物病院を受診して頂くことをお勧めします。
胃の中にある内に内視鏡で取り出すことができれば開腹手術することなくその日から通常の生活が出来ます。