症例紹介

Case43 直腸穿孔した腎不全の猫の1例

腎不全の治療経過中に左の会陰部が腫れてきた7歳の雌の猫ちゃんです。
はじめは肛門嚢炎を疑いましたが、通常の肛門嚢炎で腫れる場所より上で強い疼痛があります。

排便困難もあり腹部の触診で硬い便を触知する事が出来ますが排出されるのは泥状便のみです。腫れに気付いた翌日皮膚が自壊し便が出て来ました。

この猫ちゃんは腎不全で、BUNが100mg/dl(正常値9.2〜29.2)を超えており、また腎性貧血もあり麻酔のリスクは高いですが、このままでは生活のクオリティが極めて悪く、最悪の場合、感染で命を落とす可能性もあるので飼い主さんと相談上手術に踏み切りました。

直腸穿孔01s
肉眼所見1

 

黒い部分は壊死した皮膚で、大きな穴があいています。

傷の奥からは泥状の便が排出されてきます。

また直腸検査をすると肛門括約筋の奥が狭窄している事が判明しましたが狭窄は直腸検査中に若干改善されました。

 

直腸穿孔02s
手術所見1

 

手術用手袋にガーゼを詰めて筒状にした物を肛門から挿入し、便が出て来ない様にして大量の生理食塩水で局所を洗浄しました。

中央に白く見えるのが詰めた手袋です。

 

 

 

直腸穿孔03s
手術所見2

 

洗浄後直腸の一部を病理組織検査様に一部生検し、穿孔した直腸を縫合した所です。

再狭窄しない様、最適な向きで縫合しました。

 

 

 

 

 

直腸穿孔04s
手術所見3

 

汚染創で渗出液が多く出る事が予想されたため、ドレーンを留置し筋層と皮膚を縫合し終了しました。

 

 

 

 

直腸穿孔05s
肉眼所見

 

1回目の手術後、皮膚が哆開したため再縫合が必要でしたが初回の手術より16日後にはきれいに癒合し全て抜糸して治療終了となりました。

また病理組織検査の結果は炎症性肉芽組織で良性の病変でした。

 

ありません。