症例紹介

Case41 難治性の眼瞼炎の犬の1例

1週間程前から目の縁が赤く腫れたためかかりつけの病院を受診し、目薬で治療したが良くならなかったたのでステロイドと抗生剤の内服治療を併用するも更に悪化したとの事で上診した1歳半のワンちゃんです。

両眼瞼の発赤、腫脹と脱毛、および膿様の渗出液が認められました。
渗出液の細胞診を行ったところ、多数の好中球とリンパ球、単球、上皮細胞などが散見され細菌は認められませんでした。

肉眼所見と細胞診の所見から免疫介在性の眼瞼炎が疑われますが、ステロイドを投与しているにもかかわらず改善していないことが気になります。

眼瞼炎10-26s
初診時写真1
眼瞼炎10-26-2s
初診時写真 左目

 

試験的に免疫抑制量のステロイドと抗生剤を5日間内服して経過観察しましたがあまり改善しませんでした。

上記の治療に免疫抑制剤の一種のサイクロスポリンを加えたところ、徐々に改善傾向が見られました。

10日後には排膿も見られなくなりましたが依然として腫脹、発赤が認められ、色素脱(元の眼瞼は黒かった)も見られ、痒みも残っているとのことでした。

眼瞼炎11-4Ds
10日後 右目
眼瞼炎11-4Ss
10日後 左目

 

その後は臨床症状を観察しながらステロイドを漸減ながら更に治療を続けたところ1ヶ月後には腫れもおさまり、目の縁も黒くなりほぼ正常な状態まで回復しました。

完全に治療を終了する事が出来る場合もありますが経験的には再発するケースも多く経過観察が必要です。

眼瞼炎12-24-2s
1ヶ月後 右目
眼瞼炎12-24s
1ヶ月後 両目

眼瞼炎の原因として細菌性、皮膚糸状菌症、寄生虫性、アレルギー反応、免疫介在性皮膚疾患などがしられています。

今回は臨床症状と細胞診所見から免疫介在性眼瞼炎を疑い(確定診断には生検等が必要)ステロイドの投与を行いましたが単独では治療反応に乏しく、免疫抑制剤であるサイクロスポリンを併用することでコントロールする事が出来ました。

眼瞼にはマイボーム腺という分泌線が存在し、原因の如何にかかわらず重度の眼瞼炎が長期にわたるとマイボーム腺が委縮しドライアイを併発することがあるので迅速な対応が必要です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

 

ありません。