症例紹介

Case4 血栓溶解療法が奏功した肥大型心筋症の猫

2時間前から突如右前肢を挙上したとのことで来院された4歳、6.7kgの大きな雄猫君です。

身体検査で右前肢のナックリングと足先の冷感、爪のチアノーゼが認められ、血栓塞栓症が疑われました。

血栓症1s
患肢の感覚が低下しナックリングしている
血栓症2s
初診時レントゲン背腹像
血栓症3s
初診時胸部レントゲン写真 右下像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

心エコー検査では左心室の壁が8.1mm(正常は6mm以下)と厚くなっている事がわかり肥大型心筋症と診断しました。

血栓症4s
心エコー所見

 

 

 

 

 

 

 

 

以上の検査所見から、肥大型心筋症に伴う血栓塞栓症と診断し、血栓溶解剤「クリアクター注射薬」の投与をおこないました。

血栓症5s
パットの壊死

投与4日目より前肢の血行が徐々に回復し、麻痺(ナックリング)やパットの皮膚の壊死が認められましたがその後徐々に回復し、発症から一月半を経過した現在、歩き方はほぼ正常になりました。

 

血栓症6s
退院時胸部レントゲン写真 背腹像
血栓症7s
退院時胸部レントゲン写真 右下像

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

肥大型心筋症はメイン•クーンやアメリカン•ショートヘアーで発生が多く、原因は遺伝的な異常が示唆されています。また、甲状腺機能亢進症の猫ちゃんでは二次的に心臓の壁が厚くなることがあり鑑別が必要です。

血栓塞栓症の90%以上は何らかの心疾患があり、大部分は腹部大動脈三分岐部につまるいわゆる鞍状血栓で、救命出来る事の少ない病気です。
今回使用したクリアクターは人用の薬で、第二世代のt-PA(組織プラスミノゲン・アクチベーター)製剤に分類され、第一世代に比べ血漿中からの消失半減期が20分以上と長く、単回静脈内投与で使用する血栓溶解剤です。人では急性心筋梗塞(発症後6時間以内)と急性肺塞栓症で効果が認められている薬です。
今回の症例では血栓がつまった場所が右前足の動脈で片側だった事、発症から約3時間後と早期に治療開始できた事に加え、飼い主さんが高価な薬ではありますが本剤の使用を決断して下さった事が良い結果につながったと考えています。

調布市 つつじヶ丘動物病院

 

ありません。