症例紹介

Case35 腹膜炎を併発した前立腺炎/膿瘍の犬の1例

元気、食欲の廃絶と嘔吐、下痢を主訴に来院した10歳の未去勢雄のダックス君です。

血液検査では白血球数が46800/μl、CRP>7mg/dlと高値を示し、何らかの感染や炎症が疑われたため尿検査、レントゲン検査、超音波検査を実施しました。

腹部超音波検査では腹水と前立腺の腫大及び液体貯留が認められ、また尿中には多数の細菌が検出されました。

写真左下の黒い部分(Asite)が腹水です。 写真右下は前立腺(Prostate)で、右側の黒い部分は前立腺の中に溜まった液体(Cyst)です。

腹水s
超音波所見 腹水
前立腺s
超音波検査 前立腺

超音波ガイド下で腹水と前立腺に貯留した液体を穿刺吸引し細胞の検査を行いました。

腹水の検査では好中球や中皮細胞などが、前立腺からは多数の変性した好中球が採取され化膿性腹膜炎および前立腺炎/膿瘍と診断しました。腹膜炎の原因は前立腺から細菌がもれたためと考えられました。

細胞診腹水 s
腹水細胞診所見
細胞診前立腺 s
前立腺細胞診所見

前立腺は血液−前立腺関門というバリアーが存在するため、多くの抗生物質が到達できない事が知られていますが、幸いこのワンちゃんは点滴と前立腺に到達しやすいニューキノロン系の抗生剤、前立腺肥大の治療薬である酢酸オサテロンの投与を行ったところ順調に回復し3日目の超音波検査では腹水もみられなくなり食欲も回復し退院できました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

ありません。