症例紹介

Case30 オーバー・ザ・トップ法を行った前十字靭帯断裂の犬の1例

3歳のラブラドール犬です。雪の日に遊んでいる時に急に右後肢を着けなくなったとの事でホームドクターを受診し、前十字靭帯断裂と診断されました。
今回の執刀医はかかりつけの先生で当院で手術、麻酔のサポートをしました。

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SMALL ANIMAL SURGERYより抜粋

 

右の図は正常と断裂した十字靭帯を示しています。

十字靭帯は膝の中にある靭帯で脛骨(すね)の平行移動を制御しています。

前十字靭帯が切れているかどうかは前方引き出し試験(cranial drawer test)により診断します。

 

治療は内科療法と外科療法がありますが、10kg以上のワンちゃんでは手術が推奨されています。

外科的療法には、関節内法、関節外法、矯正骨切り術、人工物を用いた靭帯再建があり、どの術式を用いても90%の成功率があると言われています。

当院では主に関節内法の一つであるオーバー・ザ・トップ法を行っており、良好な結果を得ています。

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大腿筋膜で靭帯を作成しているところ

 

オーバー・ザ・トップ法の利は自己の大腿筋膜を利用するため拒絶反応がなく、また本来の靭帯の位置に再建されるため生物学的効果が類似する点です。

また骨切り術に比べ侵襲も少ない=動物に優しい手術です。

左写真は靭帯を形成するために筋膜(白矢印)をリボン状に切り出している所です。

 

 

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靭帯縫合しているところ

 

関節内を通した筋膜(白矢印)を膝関節の後にある種子骨の上を通して膝関節前面側に引きながら縫合して行きます。

きつい過ぎず緩すぎない引き加減がこの手術のキーポイントになります。

 

 

 

 

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筋膜を縫合し靭帯再建終了

 

筋膜を関節の前外側に縫合し靭帯再建終了です。

この後は大腿筋膜を縫合し皮下組織、皮膚を縫合し手術終了です。

術後は2週間〜1ヶ月ほどロバートジョーンズ包帯という柔らかいギブスをして徐々に足を使う様にします。

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

ありません。