症例紹介

Case14 腹膜炎を併発した子宮蓄膿症の犬の1例

食欲廃絶と下痢を主訴に来院したチワワです。
身体検査ではお腹が張った感じがあり元気もありません。

血液検査では炎症の度合いを調べるCRP(C反応性蛋白=炎症の程度の指標)の値が20mg/dl以上(正常は1以下)と高値を示し、白血球は5100/μlとむしろ低めでした。

JPG176s
子宮の超音波所見

腹部の超音波検査では子宮が15mmと拡張し内腔に液体が溜まっている事から子宮蓄膿症と診断しました。

点滴、抗生剤の投与などを行い体調の回復をはかった後に手術を行いました。
開腹すると腹水が認められ、薄い膿性で細菌も認められました。

通常の子宮蓄膿症の手術では通常、腹腔洗浄はしませんが、この症例では子宮内の細菌が漏れ、腹膜炎を併発していたので、大量の生理食塩水で洗浄し排液用のドレーン(医療用の管)を2本留置しました。

腹膜炎Pyo165
腹水の様子
腹膜炎Pyo167s
ドレーンを留置し閉腹したところ

 

その後順調に回復し、5日目にはドレーンを抜き無事翌日退院しました。

子宮蓄膿症はホルモンの影響で子宮の内膜が過形成(厚くなった)した所に細菌感染がおこり、子宮内に膿が溜まる病気です。細菌は膣から上行し、大腸菌が原因となっている事が最も多いです。

発情終了後1~12週で発症することが多く、症状は元気消失、食欲の低下〜廃絶、多飲•多尿、嘔吐、膿の排出などの症状を呈します。

血液検査では、白血球数の増加、CRPの上昇、尿素窒素の増加などの異常が認められる事が多いのです。

この症例では白血球が5100/μlと低めだった理由は、子宮蓄膿症と腹膜炎を併発し、感染がより広範で重度であったためと考えられます。敗血症であったと考えられ、あと1〜2日治療が遅れていたら助けられなかったかも知れません。

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

 

 

 

ありません。